真 もわ爛漫

しゃーら、しゃーらしゃーら

『生命保険のカラクリ』

http://www.amazon.co.jp/gp/product/4166607235/mowanetjp-22

☆☆☆☆★ (4.5)

筆者はライフネット生命という比較的新参の生命保険会社の副社長。

私の理解では生命保険というのは「人が死ぬ確率を計算して、それより高めに保険料を支払わせて利益を得る」という単純なものであるべきだと思っていた (読んだ後でも基本的にはそうだと思う)。この本では「現代日本の生命保険会社はそんなに優しくない」ということが書かれている。

印象深いのは、この本の冒頭でバフェットの名前が出たことだ。私の中でバフェットと言えば投資家であって生命保険とは何の関わりもない人間だったものだから驚いたが、読んでみればなるほどである。上記の、専門用語で言う死差益だけでなく、低リスクの運用利回りでさらに利益を稼ぐ(利差益というそうだ)のが生命保険の世界的スタンダード、ということらしい。

アメリカのように大体において成長し続けている国の生保であればそれもありだろうが、一つの問題として、現在の日本では低リスクの金融商品では利差益を狙えないという事実がある。超低金利、国内各社の成長も捗々しくない、国債のリターンも大したことない、という状況で「低リスクでも十分な利差益を得る」ことは出来ないだろう。実際この本のp151には日本の生保が利差益マイナスの状況で、海外の生保よりずっと高い死差益がそのマイナスを打ち消してトータルで利益を出している、という図が掲載されている。

死差益が大きい、というのはつまり「保険料が高い」ということで、生保に頼る側としては「それって全然嬉しくないですよね」ということになる。なにせ死差益が大きいということは、加入者からすると保険料が高いということなのだ。

本書を読んでアフラックに対する印象は変わった。アフラック外資の生保であり、私が思っていたよりはるかに健全なようだ。幸い今住んでいる十条の商店街(十条銀座)にはアフラックの店舗があるので、少し話でも聞いてみることにしよう。

本書は「生命保険って、理屈はわかるけど実情が良くわからん」という人にとっては非常にためになる。新書なのでそれほど嵩張らず、新書の割には賞味期限が長い文章構造になっている点も素晴らしいし、なによりこの本の2009/10/20でリーマンショック以後の業界についても解説されている。

この本を読めば、ライフネットを選ぶかどうかはともかく、高コスト体質の旧来生保にハマるということはなくなるだろう。つまり、いまどき流行らない営業の人々のクビを切れずにそれらの人を養うために余分に加入者から金を取ろうとするような生保はサヨウナラ、というわけだ。

本の文章量、それに対する情報量、情報の新鮮さ、どれをとっても一級品。買いの一手だ。