真 もわ爛漫

しゃーら、しゃーらしゃーら

映画『それでもボクはやってない』

映画「それでもボクはやってない」

良い。スッゴク良い。でも正直私が「良い」と言う以上、人にはあまり薦められない(笑

一言で言えば痴漢冤罪の映画であり、格言としてまとめれば「李下に冠を正さず」となる。それで納得できるのなら見る必要はないだろう。

この映画は、李下に冠を正しちゃってしかもちょっと意固地なために痴漢を認めることをせず結局は無罪を貫こうとして親や親友どころか昔の彼女にまで痴漢の容疑がかかってることを知られてしまったネジの飛んでるフリーターの物語、である。

判決は見てのお楽しみとして、それまでのプロセスが非常に面白い。捕まってから裁判に至るまでもネタに不自由していないし、初公判後も全く飽きさせない。期待と落胆を交互に混ぜ、徐々に心は下向きに下向きになる。

好印象を得るべきキャラはどこまでも好印象、悪はどこまでも悪。そしてこの物語においては、観客が好印象を持ちそうなキャラには幸せがやってこない。

要所要所に軽く笑えるところがあるが、この笑いもまた次に来る落胆の味付けになっている感がある。笑えば笑うほど、悲惨な現実がより鮮明になるということをこの監督は良く分かっているようだ。

この手の話についての論説を読みなれている人にとっては、結論に新規性はないと思う。とにかくひたすらプロセスの悲惨さに心を焼かれるのを楽しむ映画だ。

精神的に弱い人は見ないほうが良い。電車に乗れなくなるから。

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ちなみに逮捕から裁判、判決に至るまでのプロセスについて非常にざっくりとではあるが理解できるようになっている。学校や教習所などで交通法規を学ぶムービーみたいのを見せられた人もかと思うが、あれの裁判版で、しかもめちゃくちゃ面白く仕立て上げたものとして見ても大変よろしい。民事と刑事の差とか、裁判のプロセスとか、何で起訴されたら99.9%有罪になっちゃうのかとか。