真 もわ爛漫

しゃーら、しゃーらしゃーら

プロセッサを支える技術

http://www.amazon.co.jp/dp/4774145211/mowanetjp-22

コンピュータのプロセッサ、メモリ、入出力装置などについての関係や周波数などの基本的な用語についての説明から始まり、(命令, マイクロ)アーキテクチャCISCRISC、果ては仮想化やGPGPUについてまで、かなり広範にプロセッサに関連した技術等を早足で解説した本です。

個人的には、大学時代には今ほど分野として大きくなかった「仮想化」や「GPU」についてのトピックが特に勉強になりました。プログラマの方などで、ハードウェアにごく近い分野について、用語は知っていつつも一度全体を通して眺めてみたいと思われている方がいらっしゃれば、本著はちょうど良い内容かもしれません。

ただし難点もあります。私の印象の限りですと、扱うトピックが極めて広範である割にページ数が少なく、範囲が広い分だけ個別の内容についての解説は少なく感じました。パイプライン等の比較的理解されている用語については言うに及ばず、ALUやFPUの高速化についての解説でもほとんど何の準備もなしに論理ゲートの図が登場しており、一度勉強したことがある私でも難しい面がありました。興味をもって読み始めながらもその分野については比較的初学者であろう読者の方が「フルアダー(FA)のツリーで部分積を加算するウォレスツリー(1桁分)」という図をスラスラ理解できるのか、少々疑問です。また一方、それらを実際に理解する教科書としては省略が多く説明が足りないため、「帯に短したすきに長し」と感じる部分が何ヶ所かあります。

それを含めても、私としては好著ではないかと考えます。こういった図書は私が記憶している限りではあまりなく、特に近年の動向にもわずかながら触れている面で好印象でした。一度勉強を終えた方にとっては復習代わり、興味があるけれどもどういうものなのかさっぱり分からないという方にはさわりとして、おすすめできる内容かと思います。

なお、入門書という目的であれば、この分野にはすでに http://www.amazon.co.jp/gp/product/482228266X/mowanetjp-22 などありますので、興味がおありであればそちらに挑戦してから、というのも可能かと思われます。ただ、本著自体は命令セットアーキテクチャのお話だけのものでは無いので、他にも色々と補完するための教科書は必要だと思われます。

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まぁつまり今更トマスロという名前を見ることになろうとは思わなかったわけだよ!